犬のマウンティング、なぜするの?本当の理由とやめさせるための正しい対処法

愛犬のマウンティング行動に戸惑いや疑問を感じていませんか?この記事では、犬がマウンティングをする本当の理由を多角的に解説し、その行動の裏に隠された愛犬の気持ちを深く理解できます。興奮やストレス、遊び、コミュニケーション、優位性、性的な行動など、マウンティングには実に多様な意味合いがあるのです。また、状況に応じた正しい対処法や、根本的な改善を目指すしつけのヒントもご紹介します。愛犬の行動を正しく理解し、適切な方法で接することで、マウンティングの悩みを解決し、より良い関係を築けるようになるでしょう。

1. 犬のマウンティングとは?その行動の基本的な理解

犬のマウンティングは、多くの飼い主さんが目にする行動の一つですが、その意味や理由については誤解されていることも少なくありません。この章では、犬のマウンティングがどのような行動なのか、その基本的な理解を深めていきましょう。マウンティングは単なる性行動にとどまらず、犬の多様な感情や意図が込められた複雑な行動です

1.1 犬のマウンティングは自然な行動?

犬のマウンティングは、多くの犬に見られるごく自然な行動です。生後間もない子犬の頃から、兄弟犬や親犬に対してマウンティングを試みることがあります。これは、遊びの中で見られる行動の一つであり、成長の過程で自然に現れるものです。性的な成熟とは関係なく、興奮した時や、遊びがヒートアップした時など、さまざまな状況で発生します。

マウンティングは、犬が自身の感情を表現する手段の一つであり、本能的な行動パターンの一部と言えます。そのため、犬がマウンティングをしているからといって、必ずしも問題行動と捉える必要はありません。しかし、その頻度や対象、状況によっては、犬が何らかのサインを送っている可能性もありますので、注意深く観察することが大切です。

1.2 マウンティングはオス犬だけがする行動ではない

「マウンティングはオス犬だけがする行動」という認識は、よくある誤解の一つです。実際には、メス犬もマウンティングをしますし、去勢手術を受けたオス犬や避妊手術を受けたメス犬でもマウンティング行動が見られることは珍しくありません。

この事実は、マウンティングが単に性ホルモンによって引き起こされる性的な行動ではないことを示唆しています。性別に関わらず、犬は興奮やストレス、遊び、あるいは他の犬や人との関係性を確認するためなど、多様な理由でマウンティングを行うのです。例えば、メス犬が他の犬にマウンティングをする場合、遊びの延長であったり、興奮の表現であったりすることが考えられます。

マウンティング行動の背景にある理由を理解するためには、性別や去勢・避妊の有無だけで判断せず、その時の状況や犬の様子を総合的に見ることが重要です。

2. 犬がマウンティングをする本当の理由

犬がマウンティングをする行動は、一見すると単なる遊びや性的な行動に見えるかもしれません。しかし、その裏にはさまざまな理由が隠されています。犬の行動学において、マウンティングは単一の理由で起こるものではなく、複数の要因が複雑に絡み合って現れることが理解されています。ここでは、犬がマウンティングをする主な理由を深掘りして解説いたします。

マウンティングの主な理由具体的な状況や意味合い
興奮やストレス喜び、緊張、不安、恐怖などの感情が高まった際の表現や、それらの感情を処理しきれないときの転位行動として現れます。
遊びやコミュニケーション他の犬との関係構築や遊びの誘い、飼い主への要求や注意を引くための行動として見られます。
優位性の確認必ずしも「ボス」になろうとする意図だけでなく、その場の関係性を確認したり、一時的な主導権を主張したりする行動です。
性的な行動ホルモンの影響による本能的な衝動や、過去の経験から学習された行動として現れます。

2.1 興奮やストレスのサインとしてのマウンティング

犬がマウンティングをする理由の一つに、高ぶった感情の表出や、ストレスへの対処行動があります。

2.1.1 興奮しすぎた時の感情表現

犬は、喜びや興奮、あるいは緊張が高まったときに、そのエネルギーを発散するためにマウンティングを行うことがあります。例えば、飼い主さんが帰宅したとき、散歩に出かける前、大好きなおもちゃで遊んでいる最中など、感情が大きく揺さぶられる場面でマウンティングが見られることがあります。これは、犬がその感情をコントロールしきれずに、体を使って表現している状態と言えるでしょう。

2.1.2 不安やストレスからくる転位行動

犬は、不安や恐怖、ストレスを感じた際に、その感情を直接的に表現するのではなく、別の行動に転換して発散しようとすることがあります。これを「転位行動」と呼びます。マウンティングもこの転位行動の一つとして現れることがあります。例えば、新しい環境に戸惑っているとき、見知らぬ人や犬と遭遇したとき、大きな音に驚いたときなど、犬にとってストレスとなる状況下でマウンティングが見られることがあります。これは、犬が自分自身を落ち着かせようとしたり、ストレスを処理しようとしたりする行動の一つと考えられます。

2.2 遊びやコミュニケーションの一環としてのマウンティング

犬のマウンティングは、必ずしもネガティブな意味合いだけではありません。時には、遊びやコミュニケーションの手段として用いられることもあります。

2.2.1 他の犬との遊びの中で起こる場合

子犬や若い犬によく見られるのが、他の犬との遊びの中でマウンティングを行うケースです。これは、遊びの誘い、相手の反応を試す、遊びをエスカレートさせるなどの目的で行われることがあります。相手の犬が嫌がって動きを止めたり、唸ったりすれば、多くの場合はすぐにマウンティングを止めます。これは、犬同士の社会性を学ぶ上で、お互いの限界や反応を探る重要なコミュニケーションの一部と言えるでしょう。

2.2.2 飼い主への要求や注意を引く行動

犬が飼い主さんに対してマウンティングを行う場合、それは「もっと構ってほしい」「遊んでほしい」「散歩に行きたい」といった要求や、注意を引きたいという気持ちの表れであることがあります。過去にマウンティングをすることで飼い主さんの注意を引くことができた経験があると、犬はその行動を学習し、要求があるたびにマウンティングをするようになる可能性があります。これは、犬が飼い主さんとのコミュニケーション方法としてマウンティングを選んでいる状態と言えます。

2.3 優位性を示す行動としてのマウンティング

かつては「犬が群れのリーダーになろうとしている」という解釈が一般的でしたが、現代の行動学では、その見方はより複雑で多角的になっています。

2.3.1 必ずしも「ボス」になりたいわけではない

マウンティングが「優位性を示す行動」であることは間違いありませんが、それは必ずしも「相手を支配して群れのボスになろうとしている」という単純な意味合いだけではありません。犬の社会行動はもっと複雑で、「優位性」という言葉は、その場の状況における一時的な「主導権」や「自己主張」の意味合いが強いと理解されることが多いです。例えば、特定の状況下で自分の要求を通したい、あるいは自分の存在をアピールしたいといった気持ちからマウンティングが行われることがあります。

2.3.2 関係性を確認するための行動

新しい犬との出会いや、群れの中での関係性がまだ確立されていない場合に、お互いの立ち位置や関係性を確認する行動としてマウンティングが見られることがあります。これは、相手の反応を見ることで、今後の関係性をどのように築いていくかを測るための情報収集とも言えるでしょう。遊びの中で相手の反応を探るような軽いマウンティングは、犬同士の社会性を学ぶ上で重要な要素となる場合もあります

2.4 性的な行動としてのマウンティング

マウンティングの最も直接的で本能的な理由の一つが、性的な行動です。

2.4.1 ホルモンの影響による本能的な行動

未去勢のオス犬や未避妊のメス犬に見られるマウンティングは、性ホルモンの影響による本能的な行動であることがほとんどです。発情期の犬や、そのフェロモンに反応してマウンティングを行うことがあります。これは、生殖本能に基づいた自然な行動であり、犬種や個体差によってその頻度や強さは異なります。

2.4.2 去勢・避妊手術後のマウンティング

去勢・避妊手術を行うことで、ホルモンの影響による性的なマウンティングは減少する傾向にありますが、手術後もマウンティング行動が続くことは珍しくありません。これは、性ホルモンによる影響がなくなった後も、過去の経験や学習によって行動が習慣化しているためと考えられます。また、興奮、ストレス、遊び、優位性の確認など、性的な理由以外のマウンティングは、手術とは直接関係なく継続する可能性があります。手術の効果は、ホルモンに起因するマウンティングの頻度や強さを軽減するものであり、他の理由によるマウンティングには影響しにくいことを理解することが重要です。

3. 犬のマウンティング対象別に見る意味合い

犬がマウンティングを行う対象は様々ですが、その対象によって行動の背景にある意味合いが異なります。ここでは、他の犬、人、物といった具体的な対象別に、マウンティング行動が何を意味しているのかを詳しく見ていきましょう。

3.1 他の犬へのマウンティング

他の犬へのマウンティングは、ドッグランや散歩中、あるいは家庭内で複数の犬を飼っている場合など、様々な状況で見られます。この行動は、単に性的な欲求から来るものだけでなく、犬同士のコミュニケーションや関係性の確認、あるいは興奮状態の表れとして行われることが少なくありません。

具体的な状況と、その際に考えられる意味合いを以下の表にまとめました。

対象犬との関係・状況主な意味合い犬の心理・背景
初対面やあまり親しくない犬関係性の探り合い、興奮の表れ新しい相手に対する緊張や好奇心、遊びの誘い、あるいは自分の存在をアピールしたい気持ち。
遊び仲間や親しい犬遊びの延長、興奮の表現、ストレス発散遊びがヒートアップしすぎた際の感情表現、遊びの誘い方の一つ、あるいは日頃のストレスを解消しようとしている場合もあります。
群れの中での特定の犬社会的な関係性の確認、役割の認識必ずしも優位性を示すためだけではなく、群れの中での自分の立ち位置や相手との関係性を確認しようとする行動です。

相手の犬がマウンティングを受け入れているか、あるいは不快に感じて拒否しているかをよく観察することが重要です。相手の犬が嫌がっている場合は、トラブルを避けるためにも、速やかにマウンティングを中断させる必要があります。

3.2 人へのマウンティング

飼い主の足や腕、あるいは来客に対してマウンティングする行動は、多くの飼い主様が経験することかもしれません。この行動は、しばしば「犬が飼い主をボスだと思っていないからだ」と誤解されがちですが、実際には優位性を示すためだけに行われることは稀です。

人へのマウンティングの多くは、以下のような意味合いを持っています。

  • 興奮の表れ:嬉しい時、遊びに夢中になっている時、散歩前など、感情が高ぶった際にそのエネルギーを発散するために行われます。
  • 遊びの誘い:飼い主にもっと遊んでほしい、構ってほしいという気持ちを伝えるための行動です。
  • 注意を引く行動:飼い主が他のことに集中している時に、自分に注目してほしいという要求のサインとして行われることがあります。
  • ストレスや不安のサイン:環境の変化や苦手な状況に直面した際、ストレスや不安を解消しようとしてマウンティングに及ぶことがあります。

特に、子犬や若い犬によく見られる行動ですが、成犬になっても見られることがあります。感情的に叱りつけるのではなく、犬の気持ちを理解し、適切に対処することが求められます。

3.3 物へのマウンティング

ぬいぐるみ、クッション、毛布、あるいは特定の家具など、物に対してマウンティングする行動もよく見られます。この行動は、他の犬や人へのマウンティングと同様に、様々な意味合いを持っています。

  • 興奮やストレスの発散:有り余るエネルギーや、溜まったストレスを解消するために、身近な物にマウンティングすることがあります。これは、犬が自己を落ち着かせようとする転位行動の一つとも考えられます。
  • 遊びの一環:おもちゃや特定の物を対象に、遊びの中で自然にマウンティング行動が見られることがあります。これは、犬にとっての遊びの表現方法の一つです。
  • 性的な行動の発散:特に去勢手術を受けていないオス犬の場合、性的な欲求が強く、その発散として物へのマウンティングが見られることがあります。しかし、去勢済みの犬やメス犬でも見られることから、必ずしも性的な理由だけではありません。
  • 安心感の追求:特定の柔らかい物や、自分の匂いがついた物に対してマウンティングすることで、安心感を得ようとすることもあります。

物へのマウンティングは、犬にとって自然な行動の一つであり、多くの場合、深刻な問題行動とは限りません。しかし、頻繁に行われたり、過度に執着するようであれば、その背景にあるストレスや欲求不満を解消するための対策を考える必要があります。

4. 犬のマウンティングをやめさせるための正しい対処法

犬のマウンティングは、その原因が多岐にわたるため、対処法も状況に応じて適切に選ぶことが大切です。ここでは、その場で行動を止める方法から、根本的な改善を目指すしつけ、そして避けるべき行動までを詳しく解説します。

4.1 その場でマウンティングを止める方法

マウンティングが始まったら、まずは落ち着いて行動を中断させることが重要です。感情的に叱るのではなく、冷静に対応することで、犬に不安を与えることなく、行動をコントロールできるようになります。

4.1.1 落ち着かせるための介入方法

犬がマウンティングを始めた際、どのように介入すれば良いのか、具体的な方法をまとめました。犬の性格や状況に合わせて、適切な方法を選びましょう。

介入方法具体的な行動ポイント
声をかける愛犬の名前を呼んだり、「オスワリ」や「フセ」などの指示を出したりして、注意をそらします。落ち着いたトーンで、普段から使っている指示語を用いると効果的です。
行動を物理的に中断させる優しく体を支えてマウンティングの姿勢を解かせたり、リードを引いてその場から離したりします。決して叩いたり、強く押さえつけたりせず、犬が不快に感じないように配慮しましょう。
別の行動を促すお気に入りのおもちゃを見せたり、短い遊びに誘ったりして、マウンティングから意識を逸らします。マウンティングよりも魅力的な活動を提示することで、自然に行動を切り替えさせます。
一時的に場所を移動させる興奮が収まらない場合は、一時的に別の部屋やクレートなど、落ち着ける場所に移動させてクールダウンさせます。罰としてではなく、興奮を鎮めるための時間として捉えさせることが大切です。

4.1.2 叱るのではなく行動を中断させる

マウンティングをしている犬を感情的に叱りつけることは、避けるべき対処法です。犬はなぜ叱られているのかを理解できず、飼い主への不信感や不安感を抱いてしまう可能性があります。また、ストレスや不安が原因でマウンティングをしている場合、叱られることでさらにストレスが増し、問題行動が悪化することも考えられます。

大切なのは、「マウンティング」という行動そのものを中断させることであり、犬の人格を否定するような叱り方ではありません。冷静に、一貫した態度で行動を止めさせ、その後は別の望ましい行動に誘導することが効果的です。

4.2 根本的な改善を目指すしつけとトレーニング

その場での対処だけでなく、マウンティングの根本的な原因に対処し、行動そのものを減らしていくためのしつけとトレーニングも重要です。犬の心身の健康を考慮したアプローチが求められます。

4.2.1 適切な運動とストレス解消

マウンティングが興奮やストレスのサインである場合、日々の生活の中で適切な運動とストレス解消を促すことが非常に有効です。散歩の時間を十分に確保し、ただ歩くだけでなく、匂いを嗅がせる時間を設けたり、公園で軽く駆け足を取り入れたりするなど、質を高める工夫をしましょう。また、知育玩具を与えたり、短いトレーニングを遊びの中に取り入れたりすることで、頭を使う機会を作り、精神的な満足感を与えることも大切です。適度な運動と精神的な刺激は、犬の心身のバランスを整え、不必要な興奮やストレスを軽減する助けとなります。

4.2.2 興奮をコントロールするトレーニング

犬が興奮しやすい性格の場合、興奮状態を自分でコントロールできるようになるためのトレーニングが必要です。来客時や他の犬との遭遇時など、興奮しやすい状況を想定して、「オスワリ」や「フセ」、「マテ」などの基本的な指示を徹底して教え込みましょう。これらの指示は、犬が興奮し始めた際に落ち着きを取り戻すための有効な手段となります。興奮が高まる前に声をかけ、指示に従わせることで、犬は興奮のピークに達する前に自分で気持ちを切り替えることを学びます。成功したらたっぷりと褒め、ご褒美を与えることで、良い行動を強化していきましょう。

4.2.3 飼い主との信頼関係を築くコミュニケーション

犬がマウンティングをする理由の一つに、飼い主への要求や注意を引く行動があります。このような場合、飼い主との信頼関係を再構築し、より良いコミュニケーションを築くことが問題解決の鍵となります。日頃から一貫した態度で接し、犬が何を求めているのか、どんな気持ちでいるのかを理解しようと努めましょう。犬が望ましい行動をした際には、すぐに褒めたり、優しく撫でたりすることで、飼い主との絆を深めます。ポジティブな関係性を築くことで、犬は安心感を覚え、不適切な方法で飼い主の注意を引く必要がなくなっていきます。

4.3 マウンティングを誘発する環境を避ける

マウンティングをしやすい環境や状況がある場合、それらを可能な限り避けることも、問題行動の改善につながります。

4.3.1 ドッグランでの注意点

ドッグランは犬にとって素晴らしい遊び場ですが、他の犬へのマウンティングが頻繁に見られる場合は注意が必要です。愛犬が他の犬にマウンティングし始めたら、すぐに介入して行動を中断させ、その場から離れるか、一時的にリードを付けて落ち着かせましょう。他の犬の飼い主さんへの配慮も忘れてはなりません。マウンティングが繰り返されるようであれば、一時的にドッグランの利用を控え、個別の散歩や遊びに切り替えることも検討してください。相性の良い犬との交流を選び、監視の目を光らせることが大切です。

4.3.2 おもちゃやぬいぐるみへの対処

特定のおもちゃやぬいぐるみにマウンティングをする場合、それらがマウンティング行動を誘発している可能性があります。特に柔らかい素材のぬいぐるみなどは、犬がマウンティングの対象としやすい傾向があります。このようなおもちゃは一時的に片付けるか、与える頻度を減らしましょう。代わりに、噛むことで満足感を得られるおもちゃや、知育要素のあるおもちゃなど、別の行動を促すものに切り替えることをおすすめします。マウンティングし始めたら、すぐにそのおもちゃを取り上げて遊びを中断させることで、「そのおもちゃでマウンティングをすると遊びが終わる」ということを学習させることができます。

4.4 マウンティングをやめさせるためにやってはいけないこと

マウンティングを止めさせようとするあまり、かえって問題行動を悪化させてしまうような対処法もあります。犬との関係性を損なわないためにも、以下の行動は避けるようにしましょう。

4.4.1 感情的に叱りつけることの弊害

マウンティングをしている愛犬を、大声で叱ったり、体罰を与えたりすることは絶対にやめてください。犬は飼い主の感情的な反応に恐怖を感じ、萎縮してしまう可能性があります。これにより、飼い主への信頼関係が損なわれたり、マウンティングを隠れて行うようになったりすることがあります。また、ストレスや不安が原因でマウンティングをしている場合、叱られることでさらにストレスが増し、問題行動がエスカレートする悪循環に陥ることもあります。冷静に、そして一貫した態度で対応することが最も重要です。

4.4.2 無視し続けることのリスク

「マウンティングは無視すればそのうちやめる」と考える方もいますが、単に無視し続けるだけでは問題が解決しないどころか、かえって状況を悪化させるリスクがあります。特に、飼い主への要求や注意を引くためのマウンティングの場合、無視することで犬は「もっと強くアピールしなければならない」と感じ、行動をエスカレートさせる可能性があります。また、他の犬や人へのマウンティングを無視することは、トラブルの原因となることもあります。マウンティングの兆候が見られたら、早期に適切な介入を行い、行動を中断させることが大切です。

5. 専門家への相談が必要な犬のマウンティング

犬のマウンティングは、多くの場合、適切な対処法を実践することで改善が見られます。しかし、時には飼い主さんだけでは解決が難しいケースも存在します。例えば、マウンティングが非常に頻繁に起こり、犬が興奮しすぎたり、攻撃的な行動を伴ったりする場合です。また、これまでのしつけやトレーニングを試しても一向に改善が見られず、犬のストレスが強く感じられる場合も、専門家の助けを借りることを検討すべきでしょう。

専門家は、犬の行動を客観的に評価し、マウンティングの根本的な原因を探り、個々の犬と飼い主さんの状況に合わせた具体的な解決策を提案してくれます。問題が深刻化する前に、早めに相談することが大切です。

5.1 ドッグトレーナーや行動療法士の役割

犬のマウンティング行動の改善には、ドッグトレーナーや行動療法士といった専門家のサポートが非常に有効です。彼らは犬の行動に関する深い知識と経験を持ち、飼い主さんが抱える問題を多角的に分析し、具体的な解決策を提示してくれます。

5.1.1 ドッグトレーナーの具体的な役割

ドッグトレーナーは、主に犬の基本的なしつけや行動の修正、飼い主さんへの指導を行います。マウンティング行動に対しては、以下のようなアプローチでサポートします。

  • 行動の観察と評価:犬がどのような状況で、誰に対してマウンティングをするのかを詳細に観察し、その行動パターンや誘発要因を客観的に評価します。
  • 興奮をコントロールするトレーニング:マウンティングの原因となる過度な興奮を抑えるための「お座り」「伏せ」「待て」などの基本的なコマンドを応用したトレーニングを指導します。
  • 代替行動の教示:マウンティング行動が出そうになった際に、代わりに犬がとるべき適切な行動(おもちゃで遊ぶ、アイコンタクトをとるなど)を教え込みます。
  • 飼い主さんへの指導:犬への接し方、声かけのタイミング、リードの適切な使い方など、飼い主さん自身の犬とのコミュニケーションスキル向上をサポートします。
  • 環境調整のアドバイス:マウンティングが起こりやすい状況を特定し、それを避けるための環境設定や工夫について具体的に助言します。

5.1.2 行動療法士の具体的な役割

行動療法士は、ドッグトレーナーよりもさらに専門的な視点から、犬の行動問題、特に心理的な側面や行動障害に深くアプローチします。マウンティングが単なる興奮だけでなく、不安やストレス、過去の経験に起因する場合に特に有効です。

  • 詳細なアセスメント:犬の精神状態、過去の飼育環境、遺伝的要因なども考慮に入れ、マウンティングの背景にある可能性のある心理的な問題を特定します。
  • 根本原因へのアプローチ:不安症、分離不安、強迫性障害など、マウンティングの引き金となっている可能性のある根本的な心理的問題に対して、専門的な行動修正プログラムを策定します。
  • 行動修正プログラムの作成:行動科学に基づいたアプローチで、段階的に犬の行動を改善していくための個別プログラムを作成し、飼い主さんに実践方法を指導します。
  • 他の専門家との連携:必要に応じて、動物の健康を専門とする方と連携し、身体的な問題が行動に影響していないかを確認したり、薬物療法が必要なケースについても検討を促したりすることがあります。

5.1.3 専門家への相談を検討すべき状況

以下のような状況に当てはまる場合は、専門家への相談を強くお勧めします。

相談を検討すべき状況専門家が提供できること
マウンティングの頻度が非常に高く、飼い主の介入で止まらない場合行動の根本原因を特定し、具体的なトレーニング計画を立案します。
マウンティングが他の犬や人に対して攻撃的な行動を伴う場合安全な環境での行動修正、犬の感情的な状態へのアプローチを行います。
犬がマウンティング行動によって明らかにストレスや不安を感じているように見える場合ストレス源の特定と解消、リラックスを促す方法を指導します。
これまでの対処法で改善が見られず、飼い主が途方に暮れている場合飼い主の状況に合わせた個別のアドバイスとサポートを提供します。
マウンティングが原因でドッグランや散歩など、社会的な活動に支障が出ている場合社会化トレーニングや適切な環境設定について助言します。

5.1.4 専門家を選ぶ際のポイント

専門家を選ぶ際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。

  • 経験と実績:犬の行動問題に関する豊富な経験と実績があるかを確認しましょう。
  • トレーニング方法:ポジティブ強化など、犬に優しいトレーニング方法を採用している専門家を選びましょう。
  • 飼い主への説明の丁寧さ:犬の行動やトレーニング計画について、飼い主さんが納得できるまで丁寧に説明してくれるかどうかも重要なポイントです。
  • 継続的なサポート:一度きりの指導でなく、継続的にサポートしてくれる体制があるかを確認することも大切です。

専門家との連携は、犬のマウンティング行動を改善し、犬と飼い主さんのより良い関係を築くための重要な一歩となります。一人で抱え込まず、必要に応じて専門家の力を借りることで、問題解決への道が開けるでしょう。

6. 犬のマウンティングに関するよくある疑問

6.1 子犬のマウンティングは普通?

子犬がマウンティングをする行動は、多くの飼い主様が驚かれるかもしれませんが、実はごく自然な成長過程の一部として見られます。

生後数ヶ月の子犬でも、他の犬や飼い主様、おもちゃなどに対してマウンティングをすることがあります。これは主に以下のような理由が考えられます。

  • 遊びの一環: 遊びの中で、他の犬や兄弟犬との力関係を試すような行動として現れることがあります。
  • 興奮や感情表現: 遊びがヒートアップしたり、嬉しい、楽しいといった感情が高まった際に、そのエネルギーを発散する方法としてマウンティングをすることがあります。
  • 探索行動: 新しいものや状況に対して、興味や好奇心からマウンティングという形で関わろうとすることもあります。

子犬のマウンティングは、性的な意味合いよりも、社会性を学ぶ過程や感情の表現として捉えられることが多いです。しかし、過度なマウンティングや、他の犬が嫌がっているのにしつこく続ける場合は、早めに適切な介入を行い、行動をコントロールする方法を教えることが大切です。成長とともに落ち着くことも多いですが、問題行動に発展しないよう、注意深く見守りましょう。

6.2 メス犬もマウンティングをする?

「マウンティングはオス犬がするもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はメス犬もマウンティングをすることは決して珍しくありません

メス犬がマウンティングをする理由は、オス犬と同様に多岐にわたります。主な理由は以下の通りです。

  • 興奮やストレスのサイン: 嬉しい、楽しいといった興奮状態や、不安、ストレスを感じた時に、その感情を発散するためにマウンティングをすることがあります。
  • 遊びやコミュニケーション: 他の犬との遊びの中で、関係性を確認したり、遊びを誘ったりするコミュニケーションの一環としてマウンティングをすることがあります。
  • 優位性を示す行動: 必ずしも「ボス」になろうとしているわけではありませんが、他の犬や人との関係性において、自分の立場を主張したり、確認したりする行動として現れることがあります。
  • 性的な行動: 発情期には、ホルモンの影響で性的なマウンティングが見られることがあります。これは本能的な行動です。

このように、メス犬のマウンティングは性的な理由だけでなく、多様な心理状態や状況によって引き起こされることを理解することが重要です。メス犬のマウンティングが頻繁に見られる場合は、その背景にある感情や状況をよく観察し、必要に応じて対処法を検討することをおすすめします。

6.3 去勢・避妊手術でマウンティングはなくなる?

去勢・避妊手術は、犬の性的な行動を抑制する効果が期待されますが、マウンティング行動が完全になくなるわけではありません。手術後のマウンティング行動の変化については、以下の点が挙げられます。

6.3.1 性的なマウンティングへの影響

去勢・避妊手術は、性ホルモンの分泌を抑えるため、性的な理由によるマウンティング行動の頻度は減少する傾向にあります。特に、オス犬のメス犬に対するマウンティングや、発情期のメス犬に見られる性的なマウンティングは、手術によって大きく改善される可能性があります。

しかし、手術を受ける時期や、マウンティング行動が習慣化しているかどうかによって効果は異なります。長期間にわたり性的なマウンティングを繰り返していた犬の場合、手術後も習慣として残ってしまうことがあります。

6.3.2 性的な理由以外のマウンティングへの影響

マウンティングは性的な行動だけでなく、興奮、ストレス、遊び、優位性の主張など、様々な理由で起こります。これらの性的な理由以外のマウンティングに対しては、去勢・避妊手術の効果は限定的です。

手術後も、犬が興奮しすぎた時や、不安を感じた時、あるいは遊びの中でマウンティングをすることがあります。この場合、マウンティングは性ホルモンとは関係なく、犬の心理状態や学習された行動として現れているため、手術だけでは解決しないことが多いです。

以下に、去勢・避妊手術とマウンティングの関係をまとめました。

マウンティングの主な理由去勢・避妊手術による効果補足
性的な本能(ホルモン由来)高い効果が期待できる性ホルモンの分泌が抑制されるため、頻度が大幅に減少する傾向にあります。
興奮やストレスの表現効果は限定的性ホルモンとは直接関係ないため、手術後も行動が見られることがあります。
遊びやコミュニケーション効果は限定的社会的な行動や学習された行動であるため、手術だけでは改善されにくいです。
優位性の主張効果は限定的関係性を確認する行動であり、手術後も他の要因で継続する可能性があります。

去勢・避妊手術を検討する際は、マウンティングの主な原因が何であるかをよく見極めることが大切です。性的な理由以外でマウンティングが頻繁に見られる場合は、手術と並行して適切なトレーニングやしつけを行うことが、行動改善の鍵となります。

7. まとめ

犬のマウンティングは、興奮やストレス、遊び、コミュニケーション、関係性の確認、性的な本能など、実に多様な理由から起こる自然な行動です。オス犬だけでなくメス犬や子犬にも見られ、対象によって意味合いが異なります。大切なのは、感情的に叱るのではなく、その行動の背景を理解し、その場で落ち着かせる介入や、適切な運動、しつけを通じて根本的な改善を目指すことです。愛犬とのより良い関係を築くため、この記事でご紹介した対処法をぜひ実践してみてください。愛犬家にとってタメになる情報を発信しています。是非他の記事もチェックしてみてください。

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