【徹底解説】犬が耳をかく原因は?アレルギー?寄生虫?症状別の見極め方と予防策

犬が耳をかく行動は、単なる癖ではなく、愛犬からの大切なサインかもしれません。この記事では、その行動の裏に隠された様々な原因を徹底的に解説します。アレルギー、寄生虫、細菌・真菌感染症といった主なトラブルから、異物やストレスまで、症状別の具体的な見極め方をご紹介。愛犬の耳に異変を感じた時に「何をすべきか」「いつ専門家に相談すべきか」が明確に分かり、適切な対処法や日々の予防策まで網羅的に学べます。愛犬の快適な生活のために、耳の健康を守るヒントを見つけてください。

1. 犬が耳をかくのはなぜ?その行動が示すサインとは

愛犬が耳をかく姿は、飼い主さんにとって日常的によく見かける光景かもしれません。しかし、その行動が単なる生理的なものなのか、それとも何らかのトラブルのサインなのかを見極めることは、愛犬の健康を守る上で非常に重要です。

1.1 犬が耳をかくのは自然な行動です

犬が耳をかくこと自体は、必ずしも異常ではありません。私たち人間がちょっとした痒みを感じたときに頭をかくのと同じように、犬も軽い痒みや耳の違和感を解消するために耳をかくことがあります。

1.1.1 健康な犬も耳をかく理由

健康な犬であっても、以下のような理由で耳をかくことがあります。

  • 一時的な痒み:耳の中にたまったわずかな埃や、軽い刺激によって一時的に痒みを感じることがあります。
  • 耳垢の排出を促す:耳をかくことで、自然な耳垢の排出を助けることもあります。
  • 耳の違和感の解消:寝起きや遊びの後に、耳の位置を直すような感覚で軽くかくこともあります。

これらの場合は、短時間で終わり、その後は普段通りの様子であれば、特に心配する必要はありません。重要なのは、その頻度や強さ、そして他に異常なサインがないかを確認することです。

1.2 「耳をかく」行動が示す危険なサイン

犬が耳をかく行動が、いつもと違う、頻繁すぎる、あるいは他の異常な行動と同時に見られる場合は、何らかのトラブルが隠れている可能性があります。愛犬の健康状態を把握するために、その変化に気づくことが大切です。

1.2.1 頻度や強さの変化に注目してください

以下のような耳をかく行動が見られたら、注意が必要です。

  • しきりに耳をかく:一日に何度も、あるいは長時間にわたって耳をかく行動が続く場合。
  • 執拗に耳をかく:耳をかく力が強く、皮膚を傷つけるほど激しくかく場合。
  • 夜中に耳をかく:寝ている間も痒みで目を覚まし、耳をかく場合。
  • 他の行動を中断して耳をかく:食事中や遊びの最中など、普段中断しないような状況で耳をかく場合。
  • 地面に耳をこすりつける:前足でかくのではなく、頭を振って地面や家具に耳をこすりつける行動が見られる場合。

これらの行動は、強い痒みや不快感、痛みを伴っている可能性を示唆しています。

1.2.2 耳をかく以外の関連行動にも注意してください

耳をかく行動と同時に、以下のような症状が見られる場合は、さらに注意が必要です。

  • 頭を激しく振る:耳の中に異物が入ったような違和感や、強い不快感があるときに頭を振ることがあります。
  • 首を傾げる:片方の耳に問題がある場合、その耳を下にするように首を傾けることがあります。
  • 耳を触られるのを嫌がる:普段は触らせてくれるのに、耳に触ろうとすると嫌がったり、痛がったりする場合。
  • 耳から異臭がする:耳から普段とは違う、酸っぱいような、あるいはカビのような悪臭がする場合。
  • 分泌物が出ている:耳の穴から、黒っぽい耳垢、黄色い膿、血のような液体などの分泌物が見られる場合。
  • 耳の周りの皮膚が赤くなっている、腫れている:耳の入り口や耳の周りの皮膚に炎症のサインが見られる場合。
  • 元気がなく食欲がない:耳のトラブルが原因で、全身的な体調不良を引き起こしている可能性もあります。

1.2.3 耳をかく行動が示す可能性のある問題

犬が耳をかく行動は、その様子や他の症状と合わせて、さまざまな問題のサインとなり得ます。以下に、行動とそれによって示唆される状態や感情の例をまとめました。

行動の種類示唆される状態や感情
軽い耳かき、短時間一時的な不快感、自然な耳の手入れ
頻繁に、執拗に耳をかく強い痒み、不快感、痛み
頭を振る、首を傾げる耳の違和感、平衡感覚の異常、痛み
耳を触られるのを嫌がる痛み、炎症、過敏症
耳を地面にこすりつける強い痒み、不快感、痛み
耳から異臭や分泌物がある感染症、炎症
耳の赤みや腫れ炎症、アレルギー反応

これらのサインに気づいた場合は、自己判断せずに、適切な対応を検討することが重要です。次の章では、犬が耳をかく具体的な原因について詳しく解説します。

2. 犬が耳をかく主な原因はこれ!症状別の見極め方

犬が耳をかく行動は、単なる癖ではなく、何らかの体の不調を示す大切なサインです。その原因は多岐にわたり、アレルギー、寄生虫、細菌や真菌による感染症、異物の混入、さらにはストレスまで考えられます。ここでは、それぞれの原因と、飼い主さんがご自宅で観察できる症状の見極め方について詳しく解説いたします。

2.1 アレルギーが原因の場合

アレルギーは、犬が耳をかく非常に一般的な原因の一つです。免疫システムが特定の物質に過剰に反応することで、皮膚の痒みや炎症を引き起こします。耳は特に症状が出やすい部位として知られています。

2.1.1 食物アレルギー

食物アレルギーは、特定の食べ物に含まれるタンパク質成分などに対して、体の免疫システムが過剰に反応することで起こります。症状は全身に現れることが多いですが、耳の痒みや炎症が特に顕著になることがあります。痒みは季節に関係なく一年中続く傾向があり、皮膚の赤み、フケ、脱毛、皮膚の肥厚が見られることがあります。また、耳の痒みだけでなく、足先を舐める、脇の下や股の付け根を痒がるなどの皮膚症状や、嘔吐や下痢といった消化器症状を伴うこともあります。

見極め方としては、特定の食事を与え始めてから症状が出始めたか、食事内容を変えることで症状に変化があるかなどを注意深く観察することが重要です。他のアレルギーと異なり、食事内容が直接的な原因となるため、獣医師と相談しながら除去食試験を行うことで原因となる食材を特定できる可能性があります。

2.1.2 環境アレルギーとアトピー性皮膚炎

環境アレルギーは、花粉、ハウスダスト、ダニ、カビといった環境中のアレルゲンに体が反応することで起こります。遺伝的な素因を持つ犬に多く見られ、これをアトピー性皮膚炎と呼びます。症状は、顔、足、脇の下、お腹、そして耳など、特定の部位に痒みや炎症が集中して現れることが多いです。特に耳は、痒みによる赤み、腫れ、皮膚の肥厚、色素沈着などが頻繁に見られます。

見極め方としては、特定の季節に症状が悪化するかどうか(例えば、花粉の時期)、または特定の環境(例えば、家の中)で痒みが強くなるかどうかがポイントになります。痒みが慢性的に続き、耳を頻繁に掻いたり、頭を振ったりする行動が見られたら、環境アレルギーの可能性を疑う必要があります。

2.2 寄生虫が原因の場合

犬の耳の痒みは、寄生虫の感染によって引き起こされることも少なくありません。特に耳ダニは、耳の内部に寄生し、激しい痒みを引き起こします。

2.2.1 耳ダニの症状と対処法

耳ダニ(ミミヒゼンダニ)は、犬の耳の奥に寄生する小さなダニです。このダニが耳の皮膚を刺激することで、非常に強い痒みを引き起こします。感染した犬は、頻繁に耳をかく、頭を激しく振る、耳を傾けるなどの行動が見られます。特徴的な症状として、耳介の裏や内側に、黒く乾燥したコーヒーかすのような耳垢が大量に溜まることが挙げられます。この耳垢は、ダニの糞や分泌物、血液などが混じり合ったものです。耳ダニは感染力が強く、同居している他の動物にも容易に感染することがあります。

対処法としては、耳ダニが疑われる場合は、速やかに動物病院を受診することが重要です。獣医師による適切な診断と、ダニを駆除するための薬の処方が必要になります。自己判断での耳掃除や市販薬の使用は、症状を悪化させる可能性があるので避けてください。

2.2.2 ノミやマダニの影響

ノミやマダニは、耳の内部に直接寄生することは稀ですが、耳の周辺や内側に付着し、吸血することで痒みや炎症を引き起こすことがあります。ノミは犬の全身に寄生し、その唾液がアレルギー反応を引き起こすことで、全身性の強い痒みを伴う皮膚炎を起こすことがあります。耳の周りにもノミの糞(黒い小さな粒)が見られることがあります。マダニは、草むらなどに潜んで犬の皮膚に付着し、吸血します。耳の縁や内側など、皮膚の薄い部分に付着していることが多く、付着部位に赤みや腫れが見られます。マダニは貧血を引き起こしたり、様々な病原体を媒介したりする危険性もあります。

見極め方としては、耳だけでなく体の他の部位も痒がっているか、被毛の中にノミの糞やマダニがいないかを確認することが大切です。特に散歩後には、全身のチェックを習慣づけることで、早期発見に繋がります。

寄生虫の種類主な症状見極めポイント
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)非常に強い痒みで頻繁に耳をかく ・頭を激しく振る、耳を傾ける ・耳介の裏や内側に黒く乾燥したコーヒーかすのような耳垢 ・炎症による赤みやただれ・耳垢の色や性状 ・同居の他の動物にも同様の症状があるか ・耳を触ると痛がるか
ノミ・マダニ・耳の周辺だけでなく、全身に強い痒み ・ノミの糞(黒い粒)が見られることがある ・マダニが皮膚に付着していることがある ・吸血による皮膚の炎症や赤み・耳だけでなく体の他の部位も痒がるか ・被毛の中にノミの糞やマダニがいないか ・散歩後などに体のチェックをしているか

2.3 細菌や真菌による感染症の場合

耳の痒みや炎症は、細菌や真菌(カビの一種)の感染によっても引き起こされます。これらは、耳の構造や環境(高温多湿など)、アレルギーなどの基礎疾患が原因で増殖しやすくなります。

2.3.1 外耳炎とマラセチア性皮膚炎

外耳炎は、耳の入り口から鼓膜までの外耳道に炎症が起こる、犬で最も一般的な耳の病気です。痒み、赤み、腫れ、悪臭、そして黄色や茶色の分泌物が見られます。原因は様々で、アレルギー、異物、耳ダニなどが引き金となり、細菌や真菌(特にマラセチア)が二次的に増殖することで症状が悪化します。

マラセチア性皮膚炎は、酵母菌の一種であるマラセチアが耳道内で過剰に増殖することで起こる感染症です。マラセチアは健康な犬の皮膚にも常在していますが、耳の湿度や温度が上がったり、アレルギーなどにより皮膚のバリア機能が低下したりすると、異常に増殖して炎症を引き起こします。マラセチア性外耳炎の大きな特徴は、脂っぽくベタつく耳垢と、非常に強い甘酸っぱいような独特の悪臭です。

感染症の種類主な症状特徴的な耳垢や悪臭見極めポイント
外耳炎(細菌性)・痒み、赤み、腫れ ・頭を振る、耳を掻く ・耳を触られるのを嫌がる黄色やクリーム色の膿のような耳垢 ・強い悪臭がすることがある・耳の入り口から奥にかけての炎症 ・分泌物の色や量 ・耳を痛がる様子
マラセチア性皮膚炎強い痒み ・耳の赤み、皮膚の肥厚、色素沈着 ・頭を振る、耳を掻く脂っぽくベタつく茶色い耳垢甘酸っぱいような独特の悪臭・耳垢の性状と悪臭 ・他の部位(脇の下、指の間など)にも皮膚炎があるか

2.3.2 中耳炎や内耳炎への進行

外耳炎が適切に治療されずに放置されると、炎症が鼓膜を越えて中耳や内耳へと進行する可能性があります。中耳炎や内耳炎は、強い痛みを伴い、犬の生活の質を著しく低下させます。症状としては、頭を傾ける、平衡感覚の異常によるふらつき、眼振(眼球が不随意に揺れること)、顔面神経麻痺(顔の表情が左右で異なる、まぶたが閉じられないなど)といった神経症状が現れることがあります。

見極め方としては、外耳炎の症状が悪化するだけでなく、犬が頭を異常に傾けたり、まっすぐ歩けなくなったり、食欲不振や元気がないといった全身症状が見られたら、中耳炎や内耳炎に進行している可能性が高いです。これらの症状が見られた場合は、緊急性が高いため、速やかに動物病院を受診してください。

2.4 その他の原因

アレルギーや感染症以外にも、犬が耳をかく原因はいくつか考えられます。

2.4.1 耳の異物や耳垢の蓄積

散歩中に草むらに入った際に、草の種子や小さな虫、砂などが耳の中に入り込んで異物となることがあります。これらの異物は、耳道内を刺激し、急な痒みや痛みを引き起こします。多くの場合、片方の耳だけに症状が現れることが多いです。また、犬種によっては、耳道内に毛が生えやすかったり、耳垢の分泌が多かったりするため、耳垢が過剰に蓄積して耳道を塞いでしまうことがあります。これにより、通気性が悪くなり、痒みや炎症の原因となることがあります。

見極め方としては、急に片耳だけを痒がり始めた場合や、耳の入り口から異物が見える場合、あるいは耳垢が異常に溜まっている場合は、これらの原因を疑う必要があります。無理に自分で取り除こうとすると、かえって耳道を傷つけたり、異物をさらに奥に押し込んでしまったりする危険性があるため、動物病院での処置をおすすめします。

2.4.2 ストレスや行動的な問題

犬はストレスを感じた際に、過剰に体を舐めたり、噛んだり、あるいは耳をかくといった行動を示すことがあります。環境の変化(引っ越し、家族構成の変化)、分離不安、運動不足、退屈、飼い主さんからの関心不足などがストレスの原因となることがあります。これらの行動は、痒みがなくても習慣的に行われることがあり、その結果、皮膚炎を引き起こしてしまうこともあります。

見極め方としては、耳に明らかな炎症や分泌物が見られないにもかかわらず、頻繁に耳をかく行動が見られる場合、あるいは最近、犬の生活環境に変化があったり、精神的に不安定な様子が見られたりする場合に、ストレスが原因である可能性を考慮する必要があります。他の問題行動と合わせて観察することが大切です。

2.4.3 耳血腫など外傷性の問題

耳血腫は、犬が耳を強く振ったり、何かにぶつけたり、あるいは激しく引っ掻いたりすることで、耳介(耳たぶ)の皮膚と軟骨の間に血液が溜まってしまう状態です。耳がパンパンに腫れ上がり、熱を持ち、強い痛みを伴います。耳血腫は、痒みが原因で耳を激しく掻くことの二次的な結果として発生することもあります。

見極め方としては、耳介が部分的に、または全体的に厚く腫れていたり、触ると熱を持っているように感じられたり、犬が耳を触られるのを極端に嫌がったりする様子が見られたら、耳血腫の可能性が高いです。放置すると耳介が変形してしまうこともあるため、早期の治療が必要です。

3. こんな症状が出たら要注意!犬の耳トラブルのサイン

愛犬が耳をかく行動は、単なる癖ではなく、何らかのトラブルのサインである場合があります。特に以下のような症状が見られたら、注意が必要です。早期発見と適切な対処が、愛犬の健康を守る上で非常に大切です

3.1 耳の赤みや腫れ

耳のトラブルで最も分かりやすいサインの一つが、耳の赤みや腫れです。

耳の穴の入り口や、耳たぶの内側が普段よりも赤くなっていたり、熱を持っているように感じられたりする場合は、炎症が起きている可能性があります。腫れがひどくなると、耳の形が変わって見えることもあります。片方の耳だけが赤い、両方の耳が赤いなど、状態をよく観察してください。触ると痛がったり、嫌がったりする様子が見られたら、さらに注意が必要です。

3.2 強い痒みと頻繁に耳をかく行動

愛犬がしきりに耳を掻いている場合、強い痒みを感じているサインです。

一日中頻繁に耳を掻いたり、床や家具に耳をこすりつけたり、頭を激しく振ったりする行動が見られたら、耳の中に何らかの異常があると考えられます。特に夜間や休息時にこれらの行動が増える場合は、痒みが相当強い可能性があります。掻きすぎると、皮膚を傷つけてしまい、さらなるトラブルを引き起こす原因にもなります。

3.3 悪臭や膿のような分泌物

耳から普段とは違う異臭がしたり、ベタベタとした分泌物が出ている場合も、耳のトラブルの重要なサインです

健康な耳からはほとんど匂いがしませんが、細菌や真菌の感染、寄生虫などが原因で炎症が起きると、独特の匂いを発することがあります。分泌物の色や性状も、トラブルの種類を見分ける手がかりになります。

分泌物の状態考えられる匂い示唆される可能性
黄色っぽい、または茶色でベタベタしている甘酸っぱい匂い、カビのような匂い真菌(マラセチア)感染による炎症など
黒っぽい、粉っぽい、または耳垢が大量に出る特有の匂い耳ダニの寄生など
黄緑色や白色で、ドロッとした膿状腐敗臭、強い悪臭細菌感染による外耳炎など
サラサラとした透明な液体匂いは少ない、または無臭アレルギー性皮膚炎による炎症の初期段階など

3.4 耳を触られるのを嫌がる、頭を振る

普段は耳を触られても平気な愛犬が、耳に触ろうとすると嫌がったり、怒ったり、逃げたりする場合は、耳に痛みや不快感がある証拠です

また、頻繁に頭を振る行動も、耳の中に異物感や痒み、痛みを覚えているサインです。頭を傾げたままにしている、まっすぐ歩けないなど、平衡感覚に異常があるような仕草が見られる場合は、中耳や内耳といった耳の奥にまで炎症が及んでいる可能性も考えられますので、特に注意が必要です。

3.5 脱毛や皮膚のただれ

強い痒みによって愛犬が耳を掻きすぎると、耳の周りや耳の付け根の毛が抜け落ちて脱毛が見られたり、皮膚が傷ついて赤くただれたりすることがあります。

掻きむしった箇所にかさぶたができたり、皮膚が厚く硬くなったり、色素沈着を起こして黒ずんだりしている場合は、慢性的な炎症が続いているサインです。これらの症状は、皮膚のバリア機能が低下していることを示し、さらなる感染症を引き起こしやすくなるため、早期の対応が求められます。

4. 犬の耳トラブルへの対処法と予防策

愛犬が耳をかく行動には、様々な原因が潜んでいます。早期に適切な対処を行うことで、症状の悪化を防ぎ、愛犬の快適な生活を守ることができます。ここでは、具体的な対処法と、日頃から実践できる予防策について詳しく解説します。

4.1 動物病院を受診するタイミング

愛犬の耳に異変を感じたら、自己判断せずに速やかに動物病院を受診することが最も重要です。特に、以下のような症状が見られる場合は、迷わず専門家の診断を仰ぎましょう。

  • 耳の赤みや腫れがひどい、または日に日に悪化している場合
  • 耳から悪臭がする、黄色や茶色、黒っぽい膿のような分泌物が出ている場合
  • 愛犬が耳を触られるのを極端に嫌がる、痛みがある様子の場合
  • 頭を激しく振る、首を傾ける、平衡感覚がおかしいなどの行動が見られる場合
  • 食欲不振や元気がないなど、耳のトラブル以外の全身症状が見られる場合
  • 自宅でのケアを試しても改善が見られない、または症状が悪化する場合

これらの症状は、感染症や炎症が進行しているサインである可能性が高く、早期に適切な診断と治療を受けることが、耳トラブルの慢性化を防ぎ、愛犬の苦痛を軽減するために非常に重要です。原因を特定せずに市販薬などで対処しようとすると、かえって症状を悪化させたり、適切な治療の開始が遅れたりするリスクがあります。

4.2 自宅でできるケアと注意点

専門家による治療と並行して、または軽度なトラブルの予防として、自宅でできるケアもあります。ただし、症状がある場合は必ず専門家の指示に従い、無理なケアは避けてください

4.2.1 正しい耳掃除の方法

耳掃除は耳の健康を保つ上で大切なケアですが、やり方を間違えると耳のデリケートな皮膚を傷つけたり、かえってトラブルを悪化させたりする可能性があります。以下の点に注意して、優しく行いましょう

項目詳細
準備するもの犬用の耳洗浄液(刺激の少ないものを選びましょう)、コットンやガーゼ、清潔なタオル。綿棒は耳の奥の汚れを押し込んだり、耳道を傷つけたりする可能性があるため、使用は避けましょう
手順愛犬を落ち着かせ、耳の穴が見えるように耳介を優しく持ち上げます。 耳洗浄液を耳の穴に数滴垂らし、耳の付け根を優しくマッサージして液を耳道全体に行き渡らせます。 愛犬が頭を振って液や汚れを外に出そうとするので、周りが汚れないようにタオルで受け止めましょう。 耳の入り口や見える範囲の汚れを、コットンやガーゼで優しく拭き取ります。耳の奥に無理に差し込んだり、強くこすったりしないように注意してください。 反対側の耳も同様に行います。
注意点愛犬が嫌がる場合は、無理に続けず中断しましょう。無理強いは、耳掃除に対する嫌悪感を強める原因になります。 耳に傷や炎症がある場合は、洗浄液の使用が刺激になることがあるため、必ず専門家に相談してから行いましょう。 過度な耳掃除は、耳の自浄作用を妨げたり、皮膚のバリア機能を低下させたりする可能性があるため、適切な頻度を守ることが大切です

4.2.2 食事や生活環境の見直し

耳トラブルの原因がアレルギーやストレスである場合、日々の食事や生活環境を見直すことが症状の改善や予防につながります。

  • 食事の見直し:食物アレルギーが疑われる場合は、アレルゲンとなりやすい特定の食材を含まない低アレルゲン食への切り替えを検討しましょう。また、皮膚の健康をサポートする栄養素(オメガ3脂肪酸など)を適切に摂取することも大切です。
  • 湿度管理:特に高温多湿の環境は、細菌や真菌(マラセチアなど)が繁殖しやすい条件となります。室内は適切な湿度(一般的に40~60%)に保ち、換気を心がけましょう。
  • 清潔な環境の維持:愛犬の寝床や使用するタオル、おもちゃなどは定期的に洗浄し、清潔に保つことで、アレルゲンや細菌の蓄積を防ぎます。散歩後には、足や体を拭くだけでなく、耳の周りもチェックし、汚れを拭き取る習慣をつけましょう。
  • ストレスの軽減:ストレスは免疫力の低下につながり、皮膚トラブルを悪化させる要因となることがあります。愛犬が安心して過ごせる環境を整え、十分な運動や遊びを通してストレスを解消させてあげましょう。

4.3 予防のための日常的なケア

耳トラブルは一度発症すると再発しやすい傾向があります。日頃からの継続的なケアと観察が、愛犬の耳の健康を維持し、トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要です。

4.3.1 定期的な健康チェック

毎日、または数日に一度、愛犬の耳の状態をチェックする習慣をつけましょう。早期に異変に気づくことで、症状が軽いうちに対処でき、重症化を防ぐことができます。

  • 耳の臭い:普段と違う酸っぱい臭いや、カビのような臭いがしないか確認します。
  • 耳の色:耳の内部や耳介に赤みや腫れがないか、健康なピンク色をしているかを確認します。
  • 分泌物:黒っぽい耳垢、黄色や茶色のベタベタした分泌物、膿のようなものが出ていないかを確認します。
  • 痒みの頻度:耳をかく回数が普段より増えていないか、頭を頻繁に振っていないか観察します。
  • 耳の温度:触ってみて、片方の耳だけが熱いなど、異常な熱感がないか確認します。

これらの日常的なチェックに加えて、定期的に動物病院での健康診断を受けることも、全身の健康状態を含めて専門的な視点からチェックしてもらう良い機会となります

4.3.2 適切な耳の洗浄頻度

耳の洗浄頻度は、愛犬の耳の形状、犬種、個体差、活動量などによって異なります。一概に「この頻度が正しい」とは言えませんが、愛犬に合った適切な頻度を見つけることが大切です

  • 一般的な目安:健康な耳であれば、週に1回から月に1回程度の洗浄で十分な場合が多いです。
  • 長毛種や垂れ耳の犬種:耳の中が蒸れやすく汚れがたまりやすいため、やや頻繁なケアが必要になることがあります
  • 水遊びが好きな犬:水遊びの後は耳の中に水分が残りやすいため、水気を拭き取り、必要に応じて洗浄することで、細菌や真菌の繁殖を防ぎます。
  • 汚れがひどい場合:普段よりも耳垢が多い、臭いが気になるなどの場合は、洗浄頻度を一時的に増やしたり、専門家に相談したりしましょう。

過度な洗浄は耳の皮膚のバリア機能を損ねる可能性があるため、愛犬の耳の状態をよく観察し、適切な頻度で行うことが重要です。迷った場合は、専門家に相談し、愛犬に合ったケアプランを立ててもらうことをおすすめします。

5. まとめ

愛犬が耳をかく行動は、単なる癖ではなく、様々な健康問題のサインである可能性があります。アレルギー、寄生虫、細菌や真菌による感染症、異物、ストレスなど、原因は多岐にわたります。大切なのは、愛犬の耳の状態を日頃からよく観察し、赤み、腫れ、悪臭、強いかゆみといった異常に気づいたら、決して自己判断せずに専門家へ相談することです。早期発見と適切な対処が、愛犬の快適な生活を守る鍵となります。定期的な耳のケアと健康チェックで、愛犬の耳の健康を維持してあげましょう。愛犬家にとってタメになる情報を発信しています。是非他の記事もチェックしてみてください。

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